トップ 事例を探す 愛知県 【事例】愛知県稲沢市の部活動地域展開 ─ 拠点校方式の地域連携事業「いな活」を令和8年9月始動
全種目 👥 10~30万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 愛知県

【事例】愛知県稲沢市の部活動地域展開 ─ 拠点校方式の地域連携事業「いな活」を令和8年9月始動

公開:2026.07.22 更新:2026.07.22
この記事でわかること

・稲沢市が令和8年9月に始める拠点校方式の地域連携事業「いな活」の仕組みと申込スケジュール
・保護者負担約1,900円・指導報酬は市費という費用の切り分けと部活アプリによる運営DX
・吹奏楽で「いな活拠点校」と地域クラブ「市民吹奏楽団Jr.」を選べる二択設計と他地域への示唆

自治体名 愛知県稲沢市
人口規模 約13万人
中学校数 9校(稲沢・千代田・大里・治郎丸・稲沢西・大里東・祖父江・平和・明治)
運営形態 行政主導(稲沢市教育委員会 学校教育課)による拠点校方式の地域連携事業「いな活」+登録地域クラブ
対象競技 各種スポーツ・吹奏楽ほか(拠点校ごとに設定)
保護者負担額 いな活運営費のうち保護者負担は年額約1,900円(スポーツ安全保険料約800円+部活アプリ利用料約1,000円+事務費約100円)ほか消耗品・大会参加費等。指導報酬等は市費

取り組みの概要

稲沢市は、文部科学省が令和13年度までに全国すべての中学校で休日の学校部活動を地域クラブ活動へ展開する方針を示したことを受け、令和5年7月に「稲沢市部活動地域移行検討委員会」を設置し(令和8年7月までに第10回を開催予定)、段階的な地域展開を進めています。市の中核事業が、令和8年度2学期(9月5日〜)に開始する地域連携事業「いな活」です。これは、休日の学校部活動が地域クラブ活動へ展開するまでの支援として、拠点校方式で生徒が自校以外も含めた拠点校を選んで参加する仕組みで、市教育委員会が「部活動地域移行だより」を令和5年11月のNo.1から継続発行し、生徒・保護者へ丁寧に周知しています。稲沢市も国にならい「地域移行」から「地域展開」へと呼称を切り替え、学校と地域が協働して子どもの活動を支える姿勢を打ち出しています。

特徴的な取り組み

  • 拠点校方式の「いな活」と選択制: 5月中旬に拠点校紹介と地域クラブ活動紹介を公開し、5/25〜6/5に新規申込、6/11に拠点別人数を公表、6/15〜6/23に拠点校変更の受付、6/23に決定という明確なスケジュールで運用。生徒は一覧表を参考に自分に合った拠点校を選び、自校にない種目でも他校の拠点で活動できます。部活動指導員登録と「いな活サポーター」登録の2本立てで指導・運営の担い手を確保しています。
  • 部活アプリによる運営DX: 練習予定の確認・出欠連絡を部活アプリで行い、7月に登録申請・指導員承認・運営費入金、8月にアプリで9月の予定確認という段取りをデジタル化。振込手数料や端数補填のための事務費(年額約100円)も含め、運営を標準化しています。
  • 登録地域クラブ「稲沢市民吹奏楽団Jr.」: いな活とは別枠の地域クラブ活動として、9月から名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)で土曜月2回程度(9:00〜12:00)実施。指導は稲沢市民吹奏楽団の団員有志が担い、定員40名・月額1,000円+保険料年額800円、一部楽器貸出あり。定期演奏会にJr.コーナーを設けるなど、競技志向でない文化系の受け皿も整えています。

課題と解決策

課題 解決策
自校に希望する部活動がない生徒の活動機会確保 拠点校方式の「いな活」で自校以外の拠点校を選択可能にし、種目ごとに参加機会を保障
吹奏楽など拠点校の校舎セキュリティで練習場所が限られる 拠点校ごとに体育館・武道館・校舎内と練習場所を指定し、楽器の持込ルールを明示。地域クラブ「稲沢市民吹奏楽団Jr.」を別途整備
運営費負担と事務の煩雑さ 保護者負担を年額約1,900円に抑え指導報酬等は市費で負担。部活アプリで出欠・予定管理をデジタル化し事務を効率化

成果・効果

稲沢市は、令和5年7月の検討委員会設置から議事録を第1回〜第9回まで公開し、「部活動地域移行だより」もNo.7(令和8年5月)まで継続発行するなど、意思決定と周知の透明性を保ちながら準備を積み上げてきました。令和8年度2学期からの「いな活」開始に向け、拠点校紹介・申込・変更・決定のスケジュールを明確化し、保護者が迷わず手続きできる導線を整えています。運営費は保護者負担(保険料・アプリ利用料・事務費で年額約1,900円)と市費(指導報酬等)を切り分けて明示し、費用の透明性を確保。吹奏楽では拠点校での「いな活」と地域クラブ「稲沢市民吹奏楽団Jr.」の2つの選択肢を用意し、生徒が競技志向・体験志向に応じて選べる体制が形づくられています。

出典

→ 原文: 稲沢市部活動地域移行について(稲沢市公式ホームページ・教育委員会事務局 学校教育課)
→ 参考: 稲沢市部活動地域移行だより No.7(令和8年5月・稲沢市教育委員会)、稲沢市地域連携事業「いな活」実施要領(令和8年4月1日)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

稲沢市の「いな活」は、いきなり地域クラブへ全面移行するのではなく、「休日部活動が地域クラブ活動へ展開するまでの支援」という中間フェーズを明確に位置付けた点が特徴です。拠点校方式で自校にない種目も選べるようにし、申込・変更・決定のスケジュールを日付単位で公開する運用は、保護者の不安を手続きの透明性で解消する現実的な設計です。さらに、指導報酬等を市費で負担し保護者負担を年額約1,900円に抑えることで、移行初期の費用ハードルを下げています。吹奏楽で「いな活拠点校」と地域クラブ「市民吹奏楽団Jr.」の2択を用意したように、競技志向と体験志向を分けて受け皿化する発想も、多様なニーズに応える好例です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

拠点校方式は「自校以外へ通う」前提のため、移動手段と拠点校間の負担公平性が課題になります。稲沢市は拠点校紹介の一覧で生徒が事前に情報を得て選べるようにし、部活アプリで出欠・予定を一元管理することで運用負荷を抑えています。導入する場合は、まず拠点校と種目の対応表を早期に公開し、申込〜決定のスケジュールを固定して保護者の見通しを立てやすくすることが有効です。また、指導報酬を市費で持つモデルは初期の参加促進に効きますが、実施規模が拡大すると財政負担が増すため、地域クラブ(市民吹奏楽団Jr.型)への移行と受益者負担のバランスを段階的に設計しておく必要があります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

検討委員会の議事録を第1回から公開し、運営要領・実施要領・救急対応マニュアルまで整備、「だより」を継続発行している点で、意思決定とリスク管理の透明性は高い水準にあります。運営費を保護者負担分と市費に明確に区分し、スポーツ安全保険を必須化している点も安全・財源の両面で堅実です。一方、指導報酬を市費で負担する「いな活」は行政の恒久的コストとなるため、令和13年度の完全展開に向けては、地域クラブへの受け渡しと受益者負担への段階移行をどう設計するかが持続可能性の分岐点になります。

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