トップ 事例を探す 宮城県 【事例】宮城県栗原市の部活動地域展開 ─ 令和5年度から部活動を任意加入制に、5つの地域クラブが県中体連に登録して中総体へ
全種目 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 宮城県

【事例】宮城県栗原市の部活動地域展開 ─ 令和5年度から部活動を任意加入制に、5つの地域クラブが県中体連に登録して中総体へ

公開:2026.07.31 更新:2026.07.31
この記事でわかること

・令和5年度から部活動を任意加入制とし、加入率78.9%を維持している栗原市の現状
・5つの地域クラブが県中体連に登録して中総体へ参加している大会参加の道筋
・コーディネーターを4月採用・5月全校訪問という、制度設計より実態把握を先に置く順序

自治体名 宮城県栗原市
人口規模 59,147人(令和7年度・実証事業報告書)
中学校数 公立中学校7校(中学校および義務教育学校の合計)・生徒数1,337人(令和7年4月時点)・運動部活動79部活
運営形態 教育委員会が意思決定を担い、地域移行推進協議会とワーキングチームが協議検討。事務局にコーディネーターを配置。実施主体は競技協会・スポーツ少年団
対象競技 ホッケー、バレーボール(令和7年度実証)。既に5つの地域クラブが県中体連に登録
保護者負担額 実証事業の合同練習会・部活動体験会は無料

取り組みの概要

栗原市は面積805km²と広く、市内の中学校および義務教育学校は合わせて7校、生徒数は令和7年4月時点で1,337人です。生徒数は令和3年度の1,484人から減少を続け、令和12年度には1,046人と推計されています。野球やサッカー、バレーボール、バスケットボールなど集団競技種目を中心に、一つの学校の部員数では試合の出場選手数を満たせないため他校との合同チーム編成が必要になり、部員数の減少による廃部や休部で生徒の選択肢が狭まる状況が生じています。市は令和5年度から部活動を任意加入制としており、令和7年度に市立学校に設置されている部活動は運動系と文化系を合わせて90部活動、加入者数1,055人、加入率78.9%です。令和7年度は5つの地域クラブが宮城県中学校体育連盟に登録を行い、中総体へ参加しています。市は令和7年4月にコーディネーターを採用し、5月には市内中学校を訪問して部活動の現状確認と情報交換を行いました。

特徴的な取り組み

  • 令和5年度から部活動を任意加入制にする: 市は令和5年度から部活動を任意加入制としています。ただし「単に加入しなくてもよいということではなく、部活動で得られる友人や仲間、社会性や集団行動などを学べるといった側面もあることから、今後も可能な限り部活動への加入を促進していきたい」との立場も併記しています。
  • 5つの地域クラブが県中体連に登録済み: 令和7年度は5つの地域クラブが宮城県中学校体育連盟に登録を行い、中総体へ参加しています。地域クラブとして大会に出場する道筋が既に開かれている点が、実証段階の自治体としては先行しています。
  • コーディネーターを4月に採用し5月に全校訪問: 令和7年4月にコーディネーターを採用し、5月にはコーディネーターが市内中学校を訪問して部活動の現状確認および情報交換を実施しました。制度設計の前に現場の実態を把握する順序をとっています。
  • 協議会にワーキングチームを組み込む: 意思決定は教育委員会が担い、協議検討は地域移行推進協議会とその下のワーキングチームが担当します。協議会とワーキングチームが双方向でやり取りする体制図が示されています。
  • 教育委員会内で担当を明確に分ける: 学校教育課が学校部活動および部活動顧問、外部指導者に関することを、社会教育課が地域移行および地域クラブ活動、体育施設に関することを担当します。事務局はコーディネーターの配置先です。
  • ホッケーという地域特性のある競技で実証する: 令和8年2月に栗原市ホッケー協会による合同練習会(ホッケー競技)を築館多目的競技場で実施しました。指導者3人・運営スタッフ3人、参加費は無料です。令和8年3月には第2回合同練習会も予定されています。
  • 「部活動体験会」という入口を用意する: 令和8年2月に若柳排球会(スポーツ少年団)によるバレーボールの部活動体験会を若柳中学校体育館で平日夜間に実施しました。指導者6人・運営スタッフ6人、参加費は無料です。移行そのものではなく、まず体験の機会をつくる進め方です。

課題と解決策

課題 解決策
生徒数が令和3年度の1,484人から令和12年度には1,046人へ減る見込みで、従来の部活動数の維持が困難になっている 地域クラブ活動の実施主体を競技協会やスポーツ少年団に広げ、令和7年度は5つの地域クラブが県中体連に登録して中総体へ参加できる形を整える
野球・サッカー・バレーボール・バスケットボールなど集団競技で、一つの学校の部員数では試合の出場選手数を満たせない 他校との合同チーム編成に加え、地域クラブ活動という受け皿を整備して生徒の選択肢を確保する
ほとんどの部活動が平日・休日の両方で活動し、指導は教職員である顧問が主となっており、多くの教職員が休日の部活動指導に携わっている 地域移行推進協議会とワーキングチームで協議を進め、コーディネーターを事務局に配置して学校と地域の橋渡しを担わせる
制度設計を先行させると現場の実情と食い違う 令和7年4月にコーディネーターを採用し、5月に市内中学校を訪問して部活動の現状確認と情報交換を行う
生徒や保護者が地域クラブの活動内容を知らないまま移行が進む 合同練習会(ホッケー)と部活動体験会(バレーボール)を無料で開催し、参加の入口をつくる
推進計画・ガイドラインが未策定である 地域移行推進協議会でのワーキングを随時行い、実証事業の結果を反映して計画づくりを進める

成果・効果

令和7年度の実証事業では、中学校4校を対象に3つの地域クラブが活動し、指導者9人・運営スタッフ9人が関わりました。内訳は、栗原市ホッケー協会(競技協会)によるホッケーの合同練習会が令和8年2月14日に築館多目的競技場で休日午前に1回、指導者3人・運営スタッフ3人・参加費無料。若柳排球会(スポーツ少年団)によるバレーボールの部活動体験会が令和8年2月17日に若柳中学校体育館で平日夜間に1回、指導者6人・運営スタッフ6人・参加費無料です。令和8年3月には地域移行推進協議会の開催(ワーキングは随時)と、第2回合同練習会(ホッケー競技)が予定されています。

市の部活動全体では、令和7年度に市立学校に設置されている部活動数は運動系と文化系を合わせて90部活動、部活動加入者数は1,055人、加入率は78.9%です。運動部活動のみでは79部活を数えます。地域クラブ活動数は5クラブで、既に地域クラブで活動する生徒もいると市は報告しています。協議会・検討会議等は設置済みですが、推進計画・ガイドライン等は令和7年度時点で未策定です。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)成果報告書 栗原市・大崎市・亘理町・利府町・加美町」(PDF)

→ 原文: スポーツ庁「事例集・全国の取組紹介」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

栗原市の位置づけで注目すべきは、地域展開の議論より先に「部活動の任意加入制」へ踏み込んでいることです。令和5年度から任意加入としつつ、報告書には「単に加入しなくてもよいということではなく、部活動で得られる友人や仲間、社会性や集団行動などを学べるといった側面もある」として加入促進の意思も併記されています。全入が前提だった部活動を選択制へ移す作業と、活動主体を地域へ移す作業は本来別の改革ですが、栗原市は前者を先に済ませました。もう一点、令和7年度に5つの地域クラブが県中体連へ登録して中総体に参加している事実は重く、実証段階の自治体が最も苦労する大会参加資格の道筋を既に確保しています。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

面積805km²という広さは、栗原市の取組を読むうえで欠かせない条件です。合同練習会は築館多目的競技場、部活動体験会は若柳中学校体育館と、拠点が離れています。同規模の自治体が受け皿を市内1か所に集約すると、遠隔地の生徒は参加できません。地区ごとに拠点を分散させるか、送迎手段を用意するかを先に決める必要があります。次に、実証の回数です。令和7年度の実施はホッケー1回・バレーボール1回にとどまり、継続的な活動には至っていません。体験会は入口として有効ですが、年1回では移行の検証データが得られないため、次年度は回数と種目を増やす設計が要ります。第三に、推進計画・ガイドラインが未策定である点です。改革実行期間が令和8年度から始まることを踏まえると、コーディネーターが把握した現場の実情を早期に計画へ落とし込む作業が急がれます。任意加入制を先行させた自治体ほど、加入しない生徒の受け皿をどう用意するかという論点が表面化しやすく、地域クラブの整備と併せて設計すべきです。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

教育委員会が意思決定、地域移行推進協議会とワーキングチームが協議検討、事務局にコーディネーターという役割分担は明快です。学校教育課が学校部活動・顧問・外部指導者、社会教育課が地域移行・地域クラブ活動・体育施設と所掌を切り分けている点も、実務の混線を避ける整理として妥当です。実施主体を競技協会とスポーツ少年団という既存団体に置いていることも、指導者確保の面で現実的といえます。一方、地域クラブ活動数5クラブに対して令和7年度の実証は3クラブ・計2回の開催にとどまり、事業としての厚みはこれからです。加入率78.9%という数字を維持しながら、任意加入制のもとで地域クラブへの参加をどう広げるかが、次の計画に問われます。

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