【事例】北海道伊達市の部活動地域展開 ─ 元校長コーディネーターとスポーツ協会が設立した「伊達スポーツクラブ藍」による11種目提供
・北海道伊達市が地域移行で直面した課題と具体的な解決策
・運営主体の選択背景と財源確保の工夫
・他の自治体が参考にすべき3つの視点(部活動地域展開ナビの分析)
| 自治体名 | 北海道伊達市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約3.2万人(令和5年度時点) |
| 中学校数 | 4校(実証参加:3校) |
| 運営形態 | 地域スポーツ団体等運営型(体育・スポーツ協会運営型)/伊達スポーツクラブ「藍」が運営、市スポーツ協会が事務局 |
| 対象競技 | 11種目(運動部18部活) |
| 保護者負担額 | 参加会費:徴収なし、保険料:年800円(生徒負担) |
取り組みの概要
北海道伊達市では、令和5年4月4日に伊達スポーツクラブ「藍」を設立し、市内3中学校・18部活・11種目を対象とした地域クラブ活動を開始しました。運営は地域スポーツ団体等運営型(体育・スポーツ協会運営型)を採用し、市スポーツ協会が事務局を担っています。総合型地域スポーツクラブの設立経験を持つ元校長を総括コーディネーターとして任用し、約1年間の準備期間をかけてスポーツ少年団や地域チームを訪問してネットワークを構築。約60名の指導者を確保した上で活動を開始しました。指導者謝金は1,600円/時間、参加会費は徴収なし(保険料のみ年800円)とし、生徒が経済的負担なく参加できる環境を整えています。
特徴的な取り組み
- 元校長コーディネーターによるネットワーク構築:総合型地域スポーツクラブの設立経験がある元校長を総括コーディネーターに任用。設立準備期間の1年間で市内のスポーツ少年団・地域チームを丁寧に訪問し、約60名の指導者を確保。学校現場と地域スポーツ界の双方を知る人材が架け橋となり、短期間での体制整備を実現しました。
- ICT活用による事務効率化:指導者の活動記録管理にGoogle Classroomを導入し、活動データの自動集計を実現。事務局(市スポーツ協会)の業務負担を軽減しています。また、公式ウェブサイトで指導者手引き・登録申請書等をダウンロード可能にし、指導者の申請手続きを簡略化しました。
- 生徒の移動手段への配慮:伊達中学校の生徒は徒歩でアクセス可能な施設を活用し、光陵中学校の生徒にはスクールバスを運行。地理的条件の違いを考慮した移動手段を確保することで、参加機会の公平性を担保しています。
- 令和6年度からの平日活動拡大:令和5年度は休日の地域クラブ活動から開始し、令和6年度からは平日の活動日も拡大。段階的な移行により、学校・家庭・指導者それぞれへの影響を最小化しながら地域クラブの活動基盤を強化しています。
- 参加費ゼロによる参加障壁の解消:参加会費を徴収せず、保険料(年800円)のみとすることで、家庭の経済状況にかかわらず生徒が参加できる環境を整備。地方都市における子どもの活動機会の均等化に貢献しています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 地方都市における指導者確保の困難さ | 元校長コーディネーターが1年間の準備期間でスポーツ少年団・地域チームを直接訪問。人的ネットワークを活かし約60名の指導者を登録 |
| 多校間の移動手段の確保 | 徒歩アクセス可能な施設の活用(伊達中)とスクールバスの運行(光陵中)を組み合わせ、各校の地理的条件に応じた移動手段を整備 |
| 指導者活動記録などの事務作業の効率化 | Google Classroomで活動記録を自動集計。公式サイトから申請書類をダウンロード可能にし、事務局の手続き業務を削減 |
成果・効果
令和5年4月の伊達スポーツクラブ「藍」設立から、市内3中学校・18部活・11種目に対応した地域クラブ活動が稼働しています。約60名の指導者を確保し、参加費ゼロで生徒が参加できる環境を整備したことで、経済的背景を問わない参加機会の創出につながっています。ICT活用による業務効率化と段階的な平日活動拡大(令和6年度から)により、持続可能な運営体制の構築が進んでいます。総合型地域スポーツクラブの設立経験を持つ元校長をコーディネーターに配置するモデルは、地方都市における地域クラブ立ち上げの参考事例として注目されています。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和5年度 運動部活動の地域移行等に向けた実証事業 事例集」(令和6年8月)p.57-58
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
「伊達スポーツクラブ藍」という法人を地域主体で設立し、元校長がコーディネーターとして参画したこの事例は、地方小都市が限られたリソースで質の高い移行を実現するモデルとして全国的に注目に値する。特に、スポーツ協会と学校OBが連携して一般社団法人を立ち上げたことで、契約主体・財務管理の透明性が確保され、行政との協定締結がスムーズになった。法人格の取得は初期コストがかかるが、補助金申請や企業協賛受け入れの際に圧倒的に有利に働くため、長期的には賢明な選択だ。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
地方小都市で同様の法人設立モデルを試みる際の最初の壁は「誰が法人の立ち上げを担うか」だ。伊達市の場合、元校長とスポーツ協会という「信頼のある顔」が存在したが、そのような人材がいない地域では、行政がより積極的にキーパーソン発掘に関与する必要がある。また、11種目という規模は法人運営コストと参加者数のバランスが難しい水準でもある。初期は規模を絞り、軌道に乗った段階で種目を拡大するスケールアップ戦略が現実的だ。
📊 ガバナンスと持続可能性の評価
寒冷地という地理的条件から、屋内施設の確保が種目拡大の制約になりやすい。学校施設の優先利用協定を早期に締結し、施設使用料を低く抑えることが収支改善に直結する。スポーツ協会との連携を維持しながら、指導者の高齢化に備えた若手育成プログラムの設計が中長期の課題だ。
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