【事例】愛媛県今治市の部活動地域展開 ─ 「子どもが真ん中」理念のもと競技・体験・複数種目選択を保障し令和10年度中に教員平日指導ゼロへ
・愛媛県今治市の地域展開で直面した課題と解決策
・運営主体の選択背景と財源確保の工夫
・他の自治体が参考にすべき視点
| 自治体名 | 愛媛県今治市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約15.2万人(2020年国勢調査) |
| 中学校数 | 不明(市内全市立中学校が対象) |
| 運営形態 | 地域のスポーツ・文化芸術団体等との連携。市は「今治市学校部活動地域移行推進チーム」を設置し推進体制を整備 |
| 対象競技 | スポーツ・文化芸術の全種目(競技・大会志向の活動に加え、体験活動・レクリエーション的な活動、複数種目・分野の経験を含む多様な選択肢を確保) |
| 保護者負担額 | 調査時点で未公表(経済的に困窮する家庭への支援について検討) |
取り組みの概要
愛媛県今治市は、「子どもが真ん中で輝くやさしいまち”今治”〜豊かな心と生きる力を育む〜」という理念のもと、部活動の地域展開を推進しています。令和6(2024)年3月に「今治市学校部活動及び地域クラブ活動の在り方等に関する方針」を策定し、令和8(2026)年1月に最新動向(国の提言・愛媛県方針改訂・地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議の最終とりまとめ)を踏まえて改訂しました。「できるところから、できるもの」から段階的に取り組むことを基本姿勢とし、学校部活動を学校と地域が協働・融合した形の地域クラブ活動へ移行させることをめざしています。令和8年度から令和13年度までの6年間を国の改革実施期間と位置づけ、平日については休日展開を進めてから段階的に取り組む方針を示しています。
特徴的な取り組み
- 令和10年度中に教員の平日指導をゼロへ: 教員としての立場から行う平日の部活動指導期間を令和10年度中に可能な限りゼロとすることを方針に明記。学校の働き方改革と地域展開を一体的に推進する姿勢を示しています。
- 意欲ある教員による兼業制度の周知: 地域展開後も指導に関わりたい教員が地域クラブで円滑に活動できるよう、兼業制度の周知を図ります。教員の経験と専門性を地域クラブに活かす仕組みを整備しています。
- 競技志向から体験・複数種目選択まで多様なニーズに対応: 地域クラブ活動が競技・大会志向だけでなく、体験活動・レクリエーション的な活動、複数の種目や分野を経験できる活動等、生徒の志向に適した機会を段階的に確保することを方針に位置づけています。
- 大会・コンクールの運営体制の見直し: 大会の主催者は大会運営委員が不足する場合に関係スポーツ・文化芸術団体への外部委託を検討し、地域クラブ体制に対応した大会運営に見直します。また保護者・生徒の負担が過重とならないよう開催回数を厳選するとされています。
- 経済的困窮家庭への支援検討: 地域展開後の活動費用は原則として受益者負担としながらも、経済的に困窮する家庭への支援について検討することを方針に明記しています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 学校部活動を取り巻く環境が変化し、従来の体制での維持が困難になっている | 「今治市学校部活動地域移行推進チーム」を設置し、計画的・段階的に地域展開を推進する体制を整備 |
| 専門的な指導者の確保が困難 | 地域のスポーツ・文化芸術団体と連携しながら、他機関とも連携した人材バンクの整備を検討 |
| 生徒の志向が競技志向から体験志向まで多様 | 競技・大会だけでなく体験活動・レクリエーション的な活動、複数種目経験の機会を段階的に確保 |
| 教員の部活動負担が継続している | 令和10年度中に教員の平日指導をゼロにする目標を設定し、兼業制度で希望する教員の参加を支援 |
| 経済的な理由で参加できない生徒が出る可能性 | 経済的に困窮する家庭への支援策を検討することを方針に明記 |
成果・効果
令和6年3月の方針策定後、令和8年1月に最新の国・県方針を踏まえた改訂を行い、今治市の地域展開に向けた制度設計が着実に更新されています。「今治市学校部活動地域移行推進チーム」の設置により、学校・地域団体・行政の連携体制が整備されました。地域クラブ活動では競技・体験・複数種目選択という多様なニーズへの対応を保障する設計がなされており、生徒の志向に応じた選択肢の確保が進められています。令和8年度から令和13年度までの6年間を改革実施期間として位置づけ、休日から始め平日へと段階的に展開するロードマップが示されています。
出典
→ 原文: 今治市公式ホームページ 学校教育課「今治市学校部活動及び地域クラブ活動の在り方等に関する方針(令和8年1月改訂)」
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
今治市の最大の特徴は「令和10年度中に教員の平日指導をゼロへ」という具体的な数値目標です。多くの自治体が「段階的に教員の負担を軽減する」という抽象的な表現にとどまる中、年度を明示した目標設定は、学校現場・地域団体・保護者が準備の見通しを立てられるという点で重要な意義を持ちます。学校の働き方改革と地域展開を切り離さず一体的に進める姿勢が、この数値目標に端的に表れています。
「競技・大会志向だけでなく体験活動・複数種目選択も保障する」という設計思想も注目されます。従来の部活動は1つの競技を継続することが前提でしたが、今治市は体験活動・レクリエーション・複数種目経験という多様な参加形態を方針に明記しました。これは生涯スポーツ・生涯学習の観点から見ても重要で、勝利志向だけでなく「楽しく続けられる活動」を提供するという発想の転換を示しています。
令和6年3月策定→令和8年1月改訂という短期間での方針更新も見逃せません。国・県の最新動向(「地域移行」から「地域展開」への名称変更、実行会議の最終とりまとめ等)をすばやく反映させる姿勢は、地域展開を生きた政策として継続的に推進しようとする意志を示しています。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
今治市モデルで最も参考になるのは「年度を明示した教員指導ゼロ目標」です。自治体によっては学校現場からの抵抗を懸念して期限を設定しにくいケースもありますが、期限のない目標は達成されにくいのが現実です。今治市のように国の改革実施期間(令和8〜13年度)と整合させながら「令和10年度中」という期限を設定することは、他自治体でも採用しやすいアプローチです。また「できるところから、できるもの」というスタンスを明示することで、現場が過度に追い詰められずに段階的に取り組める雰囲気を作る効果もあります。
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