【事例】山口県下関市の部活動地域展開 ─ 「しものせき SD CLUB」が掲げる持続性と多様性の地域移行モデル
・下関市が「しものせき SD CLUB」ブランドで進める地域展開の全容
・3年間の実証事業「Diverse Club」で判明した生徒の活動ニーズと保護者の高い賛同率
・既存の総合型スポーツクラブを活用しながら「地域格差をなくす」を実現するための制度設計
| 自治体名 | 山口県下関市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約238,903人(令和6年時点) |
| 中学校数 | 23校(令和6年4月時点) |
| 運営形態 | 総合型地域スポーツクラブ・地域スポーツ・文化芸術団体による「しものせき SD CLUB」 |
| 対象競技 | 全種目(ダンス・吹奏楽・バスケットボール・バレーボール・バドミントン・サッカー・軟式野球・茶道・陸上など多種目) |
| 保護者負担額 | 実証事業期間中は無料。令和9年度本格実施後は事務局一元管理(具体的金額は調査時点で非公表) |
取り組みの概要
下関市では、少子化による生徒数・教員数の減少によって学校単位の部活動維持が困難になる状況に対応するため、令和5年度(2023年度)から実証事業「Diverse Club」を開始しました。「Sustainability(持続性)」と「Diversity(多様性)」を掲げた「しものせき SD CLUB」を地域クラブのブランドとして設定し、令和8年度末(2027年3月)に休日の学校部活動を終了、令和9年度(2027年4月)から地域展開を正式スタートする計画です。令和7年度には基本方針・推進計画を策定・公表し、市内10会場で保護者・地域団体向け制度説明会を開催しました。
特徴的な取り組み
- 3年間の実証事業「Diverse Club」: 令和5年度からスポーツ・文化活動を対象に段階的に実証を重ね、データと現場の声を反映した制度設計を構築。生徒の希望調査ではダンス(779人)・吹奏楽(574人)・バスケットボール(494人)など従来の部活動にとらわれない多彩なニーズが判明しました。
- 保護者の89.3%が参加に前向き: 意識調査では「地域クラブへの参加を検討する」と回答した保護者が89.3%に上り、地域移行への高い賛同率が確認されました。
- 既存の総合型スポーツクラブ10団体を活用: 市内にすでに設置されている総合型地域スポーツクラブ10クラブを受け皿として組み込み、新たな指導者確保と並行して活用する体制を整えています。
- 「地域格差をなくす」を推進の3原則に明記: 「子どもたちの活動の場をなくさない」「選択肢を準備する」「地域格差をなくす」の3原則を公式方針に掲げ、都市部・周辺部の格差解消を明確なゴールとして設定しています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 少子化・教員不足による部活動維持の限界 | 地域スポーツ・文化団体が担う「しものせき SD CLUB」へ段階的に移行し、学校依存からの脱却を図る |
| 指導者確保と育成コスト | 認定クラブへの活動経費補助・学校施設優先利用で運営コストを抑制し、参入しやすい環境を整備 |
| 地域によるアクセス格差 | 3原則として「地域格差をなくす」を明文化し、事務局一元管理で手続き負担を軽減 |
| 保護者への周知 | 令和8年4〜5月に市内10会場で説明会を開催し、広報を徹底 |
成果・効果
令和5年度から3年間の実証事業「Diverse Club」を通じて、従来の部活動にない種目(ダンス・茶道・将棋・セーリングなど)に触れる機会を創出しました。保護者の89.3%が地域クラブへの参加を前向きに検討しており、令和7年12月に基本方針・推進計画が策定・公表されたことで、本格移行に向けた制度基盤が整備されています。生徒数5,530人・加入率77.4%という現状を踏まえた現実的な工程管理が進んでいます。
出典
→ 原文: 学校部活動の地域展開について – 下関市公式ホームページ
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
下関市の最大の特徴は、「しものせき SD CLUB」というブランドに込められた「Sustainability(持続性)」と「Diversity(多様性)」の理念です。単なる部活動の移し替えではなく、ダンス・茶道・将棋・セーリングといった従来の学校部活動にはなかった種目を積極的に選択肢に加えることで、これまでスポーツ・文化活動に参加できなかった生徒層を取り込む設計になっています。
3年間の実証事業(Diverse Club)で生徒の希望を丁寧に把握した上で制度設計を進めたプロセスも注目に値します。保護者の89.3%が賛同という高い数字は、事前の丁寧な説明と実証事業での実績が信頼につながったことを示しています。既存の10の総合型地域スポーツクラブをベースに活用することで、ゼロから受け皿を作るリスクを回避した点も実践的なアプローチと言えます。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
下関市モデルの移植で最初に直面するのは「事務局機能の構築」です。会費徴収・保険加入・指導者とのマッチングを一元管理する事務局がなければ、保護者と指導者双方の負担が増大します。まず既存の体育協会・スポーツ協会を事務局候補に位置づけ、ICTツールで管理コストを下げることが出発点になるでしょう。また「地域格差をなくす」という原則の具現化には、交通手段の確保が鍵となるため、スクールバスの延長利用や送迎支援制度との組み合わせを検討する必要があります。