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【事例】愛媛県伊予市の部活動地域展開 ─ 一般社団法人「SASAERU」に事務局を委託し月額3,000円で9種目を休日の地域クラブへ

公開:2026.10.08 更新:2026.10.08
この記事でわかること

・既存の総合型地域スポーツクラブ「SASAERU」に事務局を委託した伊予市の役割分担
・月額参加費3,000円+保険料800円と、移行前に金額を確定して公開する合意形成の手法
・モデル事業→プレ実施→本格実施という3段階で指導者交代の摩擦を抑える進め方

自治体名 愛媛県伊予市
人口規模 約3万4千人(令和8年5月末現在・住民基本台帳34,509人)
中学校数 4校(港南中学校・伊予中学校・中山中学校・双海中学校)
運営形態 民間事業者への委託(市教育委員会が総合型地域スポーツクラブ「一般社団法人SASAERU」に事務局を委託)
対象競技 サッカー、バスケットボール(男女)、バレーボール(男女)、軟式野球、ソフトボール、ソフトテニス(男女)、陸上競技、卓球(男女)、吹奏楽の9種目
保護者負担額 月額参加費3,000円+保険料800円(令和8年4月以降のモデル事業参加者は保険料支払済みのため参加費のみ)

取り組みの概要

愛媛県伊予市は、令和7年度から一部の部活動を対象に「伊予市地域クラブ活動モデル事業」を実施し、令和8年度から休日部活動が順次地域クラブ活動となることを前に、モデル活動を積み重ねてきました。

運営を担うのは一般社団法人SASAERU(ササエル)です。市内の総合型地域スポーツクラブで、伊予市教育委員会が地域クラブ活動の事務局を同法人に委託しています。入会受付や参加費の収納といった実務を市役所の中に抱え込まず、クラブ側に集約した体制です。

本格実施に先立ち、令和8年8月29日(土)・30日(日)に港南中学校でプレ実施を行い、参加生徒と指導者の顔合わせおよび活動の流れの確認を実施しました。そのうえで令和8年9月から、休日部活動を順次終了し、地域クラブ活動を開始しています。

特徴的な取り組み

  • 既存の総合型地域スポーツクラブに事務局機能を委託: 地域展開のために新たな受け皿法人を設立するのではなく、市内で活動していた一般社団法人SASAERUに事務局を委託しました。会員管理・申込受付・参加費収納といった事務が一本化され、市は制度設計と調整に集中できる構造です。
  • 参加費を事前に金額で公開: 月額参加費3,000円、保険料800円と具体的な金額を市のホームページで示しています。地域展開の説明時に「費用は未定」と伝える自治体が多い中、移行前に金額を確定して公開している点が特徴です。
  • 二重徴収を避ける経過措置: 令和8年4月以降のモデル事業参加者については保険料が支払済みであることを踏まえ、本格実施にあたっては参加費のみの負担としています。モデル事業からの連続性を前提にした細かい配慮です。
  • 運動8種目に文化部1種目を加えた構成: サッカー、バスケットボール(男女)、バレーボール(男女)、軟式野球、ソフトボール、ソフトテニス(男女)、陸上競技、卓球(男女)の運動系に加え、吹奏楽を対象としています。文化部を初年度から対象に含めた構成です。
  • プレ実施で顔合わせを挟む: 本格実施の直前に2日間のプレ実施を設け、参加生徒と指導者の顔合わせ、活動の流れの確認を行いました。指導者が学校の顧問から外部指導者に代わる局面で、初日にいきなり本番を迎えない設計になっています。
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課題と解決策

課題 解決策
地域クラブ活動の受け皿となる運営団体をどう確保するか 新規法人を設立せず、市内で活動していた総合型地域スポーツクラブ「一般社団法人SASAERU」に市教育委員会が事務局を委託した
入会受付・会費収納といった事務を誰が担うのか 事務局機能をSASAERUに集約し、市は制度設計と関係調整に役割を絞った
保護者が負担額を把握できないまま移行時期を迎える不安 月額参加費3,000円・保険料800円と金額を確定し、本格実施前に市ホームページで公開した
モデル事業の参加者が保険料を二重に負担してしまう恐れ 令和8年4月以降のモデル事業参加者は保険料支払済みとして扱い、本格実施では参加費のみの負担とした
指導者が学校の顧問から外部指導者に切り替わる際の生徒の戸惑い 令和8年8月29日・30日に港南中学校でプレ実施を行い、参加生徒と指導者の顔合わせおよび活動の流れの確認を事前に済ませた

成果・効果

令和7年度のモデル事業を経て、令和8年9月から休日部活動を順次終了し、9種目を地域クラブ活動へ移行する段階に入りました。モデル事業で先行実施した種目から順に本格実施へ切り替える流れです。

保護者負担の設計は明快です。月額参加費3,000円に保険料800円を加えた形で、年度途中の加入者についても保険料の扱いを個別に整理しています。受益者負担の水準を移行前に確定させたことで、保護者は年間費用を事前に見積もることができます。

参加生徒数など実施規模の数値は、市の公式ページでは調査時点で公表されていません。

出典

→ 原文: 伊予市地域クラブ活動モデル事業(伊予市公式ホームページ)

→ 中学校: 学校教育施設(伊予市公式ホームページ)

→ 人口: 人口統計(伊予市公式ホームページ)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

伊予市の判断で最も実務的なのは、事務局を市役所に置かなかったことです。地域クラブ活動は入会受付、会費収納、未納管理、名簿更新といった事務が月単位で発生します。これを教育委員会が抱えると担当者1人の業務量が跳ね上がり、人事異動のたびに運用が揺れます。伊予市は既存の総合型地域スポーツクラブである一般社団法人SASAERUに事務局を委託し、市は制度設計と関係調整に役割を絞りました。もう一つ評価したいのは、月額3,000円・保険料800円という金額を本格実施前に公開した点です。保護者が最初に知りたいのは理念ではなく年間いくらかかるかであり、ここを曖昧にしたまま9月を迎える自治体は少なくありません。プレ実施で顔合わせを挟む2日間を確保したことも、指導者交代の摩擦を減らす小さいが効く工夫です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

この方式の前提は、事務局を受託できる体力のある総合型地域スポーツクラブが市内に存在することです。該当する団体がない自治体がそのまま真似ると、委託先選定の段階で止まります。その場合は、まず体育協会やスポーツ協会に事務局機能だけを単年度委託して実績を作り、段階的に運営へ広げる順序が現実的です。もう一点、委託先が1法人に集中すると、その団体の経営が傾いたときに市内全域の活動が同時に止まるリスクを負います。委託契約に事務引継ぎと会員データの帰属を明記し、名簿と会計データは市が随時取得できる形にしておくべきです。参加費3,000円という水準についても、就学援助世帯への減免措置を併せて設計しないと、費用を理由に参加を見送る生徒が出ます。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

受益者負担の金額を移行前に確定・公開し、モデル事業参加者の保険料二重徴収まで整理している点は、運営実務への習熟がうかがえます。令和7年度のモデル事業で試してから令和8年9月に本格実施へ移す段取りも手堅い流れです。一方、委託先が単一法人である以上、事業継続性はその法人の経営状況に依存します。参加生徒数や収支の公表、委託契約の更新条件が外から見える形になると、持続可能性の評価材料が揃います。

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