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【事例】佐賀県白石町の部活動地域展開 ─ アダプテッドスポーツ部新設とパラスポーツ協会設立・「地域展開できない種目は平日のみ」の明確方針

公開:2026.10.04 更新:2026.10.04
この記事でわかること

・アダプテッドスポーツ部とパラスポーツ協会で「競技が苦手な生徒」の場を作った実装方法
・「令和8年度までに地域展開できない種目は平日のみ」と期限と帰結を明示した方針設計
・高校と連携した部活動と、資格取得全額助成による地域指導者の公募・確保の仕組み

自治体名 佐賀県白石町
人口規模 約2.05万人(20,548人・令和6年度成果報告書時点)
中学校数 1校(令和6年4月に町内3中学校を統合した新設白石中学校・全生徒550人・部活動15部)
運営形態 白石町教育委員会(事務局:新しい学校づくり課)が運営団体、認可された各地域クラブが実施主体
対象競技 陸上競技、バスケットボール、バレーボール、卓球、ブラスバンド(ほか学校部活動で軟式野球・サッカー・剣道・ソフトテニス・ソフトボール・美術・アダプテッドスポーツ)
保護者負担額 クラブごとに異なる(白石アスリートクラブ 月2,000円/バスケットボール 月1,200円/バレーボール・卓球 0円)+スポーツ安全保険 年800円

取り組みの概要

白石町は少子高齢化が顕著に進み、令和6年4月に町内3中学校を1校に統合再編して新設白石中学校が開校しました。町はこの機を「教育現場のみならず地域スポーツ推進体制の改革や再構築まで踏み込んで再考を要する喫緊の課題」と捉え、令和4年から部活動検討委員会を開設。令和6年度までに11回の会議を重ね、①休日の部活動は令和8年度までに全種目を地域展開する ②令和5〜7年度の3年間を段階的な移行期間とする ③地域展開できない場合は令和8年度から平日のみの活動となる、という方針を決定しました。令和6年11月からは部活動検討委員会が認可する「ジュニアユース地域クラブ」制度を始動し、陸上・バスケットボール・バレーボール・卓球・ブラスバンドの5クラブが活動しています。

特徴的な取り組み

  • アダプテッドスポーツ部の新設とパラスポーツ協会の設立: 全校550人のうち特別支援学級在籍生徒が49人という実情を踏まえ、運動や他者との交流が苦手な生徒、個々に特性を持つ生徒も参加しやすい環境づくりとして「アダプテッドスポーツ部」を開設しました。活動はボッチャ・モルック・フリスビー・ソーシャルスキルトレーニングで、入部者は2年1名・1年7名・特別支援学級在籍生徒3名。入部動機には「競い合うスポーツは苦手だから」「楽しむ活動をしたいと思ったから」が挙がっています。さらに、この部の指導者が「白石町パラスポーツ協会」を設立しました。
  • 「地域展開できなければ平日のみ」という明確な期限設定: 多くの自治体が移行時期を曖昧にするなか、白石町は令和8年度までに地域展開できない種目は平日のみの活動になると明言しています。期限と帰結をセットで示すことで、関係者に判断を促す設計です。
  • 高校と連携した部活動: ハンドボール部は佐賀農業高校で週1〜2回程度、書道と放送・朗読は白石高校で週1回程度の合同活動を行っています。中学校単独では成立しない種目を、高校の施設と指導力を借りて維持する方式です。
  • 指導者資格の全額助成と幅広い職業層からの公募: 地域指導者を公募し、JSPO公認スポーツ指導者資格(スタートコーチ)の受講料・登録費を全額助成。指導者の保険加入費(1,850円)も町教委が負担します。登録者の職業は団体職員・消防士・看護師・会社員・栄養士・農業・公務員・自営業・保育士・元教員と多様で、教職員に頼らない指導体制づくりを具体化しています。
  • 部活動と地域クラブの併用型スケジュール: 曜日ごとに部活動と地域クラブ活動を振り分ける併用型の時間割を設計し、原則として土日のいずれか1日は休みとしています。「指導の一貫性」や「冬季の活動時間確保」の観点から、休日だけでなく平日も地域指導者が中心となる機会が増えつつあります。
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課題と解決策

課題 解決策
地域スポーツクラブを総括する運営団体がない 令和7年度に総合型地域スポーツクラブ「白石ジュニアユースアクティブクラブ(JYACS)」(仮称)を創設する構想を立案
財源確保と困窮家庭の生徒支援 保護者・生徒の受益者負担意識の醸成と一定の財源負担を進めつつ、総合戦略課・企画財政課と企業版ふるさと納税制度を活用した支援事業を協議
専門的な技術指導ができる教員の不足 地域指導者をスポーツ・文化芸術の両分野で公募し、JSPO資格取得費を全額助成。教職員の兼職兼業の許認可体制も整備
活動場所の確保と用具管理 学校体育施設・社会体育館・町公共スポーツ施設を有効活用し、予約手順や施設管理の規則を制定。スマートロックなどの整備も検討

成果・効果

町は成果として、学校関係者・生徒・保護者・地域住民・スポーツ関係団体の「部活動地域展開・地域連携」に関する理解が深まりつつあること、地域クラブが発足する過程で地域指導者として協力する人材の発掘につながったことを挙げています。令和7年2月に開催したジュニアユーススポーツ推進研修会の事後アンケートでは、「役に立ったか」に対し「とても」27.3%・「そう思う」54.5%と8割超が肯定的に回答しました。令和6年度には学校部活動と受け皿となる地域クラブ活動の整理も完了し、バスケットボール・卓球・バレーボール・ソフトテニスは令和7年度中に地域クラブ活動体制を整備、軟式野球・サッカー・ソフトボール・剣道・アダプテッドスポーツ部は令和7年度中に体制を検討する区分としました。令和8年度の休日完全地域展開に向け、総合型クラブ創設とサポート体制の整備を進める方針です。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 佐賀県白石町」(PDF)
→ 参考: 白石町「部活動 新たな環境づくりについて」
→ 参考: 白石町「令和7年度 白石中学校部活動・地域クラブ開設について」(PDF)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

白石町が全国的に見て際立っているのは、地域展開を「競技力のある生徒の受け皿づくり」に限定しなかった点です。アダプテッドスポーツ部の新設と、その指導者による町パラスポーツ協会の設立は、国のガイドラインが掲げる「運動が苦手な生徒や障害のある生徒が参加しやすい活動」を制度として実装した稀少な例です。入部動機に「競い合うスポーツは苦手だから」が並ぶ事実は、従来の部活動が取りこぼしてきた層の存在を示しています。もう一つの要点は「令和8年度までに地域展開できない種目は平日のみになる」という期限と帰結の明示です。曖昧な先送りを許さない設計が、関係者の意思決定を前に進めています。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

アダプテッドスポーツ部の設置は用具コストが低く(ボッチャ・モルック)、場所も中庭や多目的教室で足りるため導入障壁は高くありません。難所は指導者で、白石町はパラスポーツ指導員資格を持つ元教員や会社員を確保し、彼らが協会を立ち上げる流れを作りました。移植する際はまず町内の初級・中級パラスポーツ指導員を探すのが最短経路です。一方、「期限を切って平日のみに落とす」方針は保護者の反発を招きやすく、白石町が令和4年から11回の検討委員会と競技別検討部会、関係団体ヒアリングを積み上げた土台の上でこそ成立しています。期限だけを模倣すると合意形成が崩れるため注意が必要です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

部活動検討委員会(年4回)と競技別検討部会(年2回)の二層構造に、学校管理職・スポーツ協会・スポーツ推進委員・学識経験者・競技団体・スポーツ少年団・総合型クラブの代表が参画しており、合意形成の透明性は高い水準です。「部活動の方針」「地域クラブ活動の基本方針」の両方を策定済みで、認可制度も整備されています。財源は受益者負担と企業版ふるさと納税の併用を志向しており、会費がクラブ間で0円〜月2,000円とばらつく現状の平準化、および総合型クラブJYACSの実際の創設が持続性の鍵になります。

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