【事例】佐賀県基山町の部活動地域展開 ─ 「指導」と「運営」を分離して地域指導者の参入を促進・種目別保護者会が運営を担いR9完全移行へ
・「指導」と「運営」を分離して指導者確保のハードルを下げた具体的な仕組み
・少年スポーツ育成協議会を事務局に据え、種目別保護者会が運営を担う体制
・部活動の満足度が高い自治体で改革の合意を得るための説明の立て方
| 自治体名 | 佐賀県基山町 |
|---|---|
| 人口規模 | 約1.76万人(17,584人・令和7年2月末時点) |
| 中学校数 | 1校(基山中学校・全生徒390人・部活動17部) |
| 運営形態 | 基山町少年スポーツ育成協議会が事務局を担い、競技種目ごとの保護者会が運営 |
| 対象競技 | 軟式野球、バレーボール(男女)、バスケットボール(男女)、卓球(男女)、柔道、剣道、サッカー、ソフトテニス(男女)、空手、バドミントン |
| 保護者負担額 | 競技種目ごとに異なる(実証期間中は指導者謝金・保険料を事業費で負担) |
取り組みの概要
基山町は人口約1.76万人、2小学校1中学校という1中学校区の町です。町民のスポーツへの関心が高く、野球・ソフトボール・バレーボールは地域の活動も盛んで、部活動の満足度も高いため「現状維持を望む声が大きい」という、他の自治体とは逆の条件下で改革を進めてきました。町は令和4年に検討会議を設置し、競技協会ではなく小学生スポーツを統轄する「基山町少年スポーツ育成協議会」との連携を軸とした計画を立て、令和5年度から同協議会に委託して運営主体の検証を行ってきました。令和6年度は10月〜11月の2か月間、全運動部活動と中学生が在籍する2種目を対象に、土日を学校管理外として保護者等が運営する実証を実施。生徒125人・指導者65人が参加し、13クラブが活動しました。
特徴的な取り組み
- 「指導」と「運営」の役割分離: この事例の核心です。少年スポーツ育成協議会が調整役・事務局を担い、競技種目ごとの運営(指導者との連携、事務手続き等のマネジメント業務)は各種目の保護者会が担当。指導者は指導のみに専念できる環境になりました。町は成果として「指導の役割と運営の役割を分けることで、指導者の確保がしやすくなった」と明記しています。
- 平日より休日の方が指導者を確保できる逆転現象: 実証では平日の部活動よりクラブ活動時(休日)の指導者数が多く確保できました。要因として、運営を任せられるため指導に専念できる環境と、保護者の意識が変わって少年スポーツの指導者にも指導補助を依頼できたことを挙げています。女子ソフトテニスは見守り保護者を含め22名、男子バレーは8名の体制です。
- 3段階ステップによる段階移行: 第1段階は部活動指導員制度・外部指導者制度の活用による地域人材の介入、第2段階は地域指導者中心の体制づくりと学校管理外活動の着手、第3段階で地域展開し持続可能な体制整備、という3段階で進める方針を定めています。
- 小中一貫した練習環境: 少年スポーツ育成協議会がつなぎ役となって指導者派遣と小学生の部との連携を行い、小中を通した一貫した練習環境ができる種目が生まれました。
- 実証期間中の費用支援: 指導者謝金(2,700円・教員の特殊業務手当と同等額)、指導者・生徒の保険費用、クラブ運営の消耗品費や練習会場借用費を事業費から支出しました。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 少年スポーツがない競技種目は保護者会の運営が難しく、教員が事務手続きを担う場面が残った | 令和7年度にコーディネーターを配置し、中学生スポーツに特化した統轄団体の設立準備を進める |
| 部活動の満足度が高く現状維持を望む声が大きい | 管理体制のみを学校からシフトし、現在の活動体制は大きく変えない方針。部活動が教員の献身的な取組で成立してきた事実を説明して理解を得る |
| 社会体育クラブに移行すると学校施設でも利用料が発生する | 実証期間は学校部活動と同等の扱いとし、移行後も減免できるよう条例・規則の改正を検討 |
| 公的支援の対象とする地域クラブの基準がない | 県が示した地域スポーツクラブ活動の要件を踏まえ、町として要件・基準を設定し登録・指定制度を実施する方針 |
成果・効果
令和7年1月の町アンケートでは、生徒・保護者ともに学校との連携継続を望む声が多く、生徒からは「専門的なことを教えてもらえてよかった」「もっと技術を伸ばして試合で活躍したいと思った」という声が上がりました。一方で「外部コーチだけだと心配なことが多い」「練習とか誰に聞いていいかわからないときがある」という不安の声もあり、保護者からも「勝つだけの目的ではやってほしくない。学校生活も見ていただく先生は必要」との意見が出ています。兼業する教員については、休日が学校管理下でない時間になったことで私事を優先できるようになりました。町は「少年スポーツの有無により競技種目ごとの運営体制を構築できるかどうかに差があった」ことを最大の発見として総括しています。ロードマップでは令和7・8年度を移行促進期として運営主体を設置し、令和9年度に全部活動の休業日(土日等)を学校管理外の地域クラブ活動とする完全移行を掲げています。
出典
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