【事例】宮城県岩沼市の部活動地域展開 ─ 休日の過ごし方に4つの選択肢と「どれも選ばない自由」を明記した「いわぬまモデル」
・休日の過ごし方に4つの選択肢を示し、「どれも選ばない」ことも認めた「いわぬまモデル」
・平日は拠点型・派遣型で支え、休日は地域展開するという2本柱の構成
・平成26年度の検討開始から年3〜4種目ずつ積み上げ、令和7年10月に全部活動へ広げた工程
| 自治体名 | 宮城県岩沼市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約4万人(2026年時点) |
| 中学校数 | 市公表資料では未提示(派遣型は「各中学校2種目を上限」と規定) |
| 運営形態 | 市教育委員会が方針を策定し、休日の中学生スポーツ教室は委託事業者が運営。指導者は業務委託事業者契約指導者、仙台大学、総合体育館職員等 |
| 対象競技 | 陸上・バドミントン・卓球・バスケットボール・サッカー・野球の6種目に、令和7年10月から剣道・バレーボール・ソフトテニス・ソフトボールの4種目を追加した計10種目。文化部は吹奏楽・美術 |
| 保護者負担額 | スポーツ安全保険料800円のみ(事前登録申込制。平日の部活動支援事業は登録料もかからない) |
取り組みの概要
岩沼市の部活動改革は平成26年度の「岩沼市部活動の在り方を考える検討会」と「岩沼市教職員の働き方改革推進委員会」から始まっています。平成30年度にスポーツ教室を開催し、令和元年度に運動部(派遣型・拠点型)、令和2年度に吹奏楽部(拠点型)、令和4年度に美術部(拠点型)と支援を広げてきました。市の取組は①平日の部活動を支える「部活動支援事業」と、②休日の部活動を段階的に地域展開する「いわぬまモデル」の2本柱です。休日の地域展開は令和5年度に陸上・卓球・バドミントン、令和6年度にサッカー・バスケットボール・野球、令和7年度に剣道・バレーボール・ソフトテニス・ソフトボールと年3〜4種目ずつ積み上げ、令和7年度10月以降はすべての部活動が対象になりました。推進の目的として市は、持続可能な活動の実現、自分の時間や休日の過ごし方を生徒自身が考え選択できる環境、教職員のワークライフバランスの3点を掲げています。
特徴的な取り組み
- 「いわぬまモデル」は4つの選択肢を提示する: 生徒が休日に活動を継続したい場合、保護者の協力を得て各自の状況に合わせ、(1)保護者を中心に団体を組織して活動、(2)保護者を中心にスポーツ少年団を組織して活動、(3)総合体育館が開催するスポーツ教室や市が主催する文化教室に参加、(4)既存のクラブやスポーツ少年団に参加、の4つから選べる形にしています。
- 「どれも選ばない」ことも選択肢と明記する: 市は資料に「必ずしもこの4つの中から選択を行わなくてはならないものではない。家族の時間や勉学、趣味など、休日を他の時間として過ごすことも1つになる」と記しました。休日に活動しないという選択を公式資料で肯定している点は珍しい記述です。
- 平日は「拠点型」と「派遣型」で支える: 部活動支援事業の運動部は、総合体育館・陸上競技場を拠点に登録した生徒が放課後に参加する「拠点型」(ソフトボール・剣道以外の運動部)と、各中学校2種目を上限として学校で行う運動部活動に指導者を派遣する「派遣型」の2方式です。学校部活動の一環となるため登録料はかかりません。
- 費用は保険料800円のみ: 休日の中学生スポーツ教室は事前登録申込とスポーツ安全保険料800円で参加できます。申込は保護者が総合体育館の窓口で行います。
- 年3〜4種目ずつ計画的に増やす: 令和5年度に3種目、令和6年度に3種目、令和7年度に4種目と、毎年度の追加種目を明示しながら段階的に拡大しました。一度に全種目を移さず、運営体制を確かめながら広げる進め方です。
- 文化部は楽器ごとに年2回・計20回: 吹奏楽支援は楽器ごとに年2回、計20回の開催を予定し、専門業者に講師派遣を依頼して実施します。美術支援は年に数回、デジタルデザインや絵画などの分野を開催し、専門の講師や市文化協会の協力で実施を検討しています。いずれも開催時期の1か月前を目処に学校へ参加案内を送付します。
- 大学と連携して指導者を確保する: 平日の運動部活動を担う指導者は、業務委託事業者の契約指導者、仙台大学、総合体育館職員等です。指導者はコーチバンク登録者、競技協会、総合体育館職員等から確保しています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 少子化により活動の維持が困難になり、実施できる種目や活動内容が限定される | 休日の部活動を段階的に地域展開する「いわぬまモデル」を進め、令和5年度3種目・令和6年度3種目・令和7年度4種目と年度ごとに種目を追加して令和7年10月以降は全部活動を対象とする |
| 教職員が休日の部活動指導に従事し、働き方改革が進まない | 平日は部活動支援事業(拠点型・派遣型)で専門の外部指導者が指導を担い、休日は市が主催・委託するスポーツ教室や地域の団体が受け皿となる |
| 休日の受け皿を一つに決めると、家庭の事情や生徒の志向に合わない場合がある | 保護者中心の団体組織、保護者中心のスポーツ少年団組織、総合体育館のスポーツ教室・市の文化教室、既存クラブ・スポーツ少年団という4つの方法から選べる形とする |
| 「必ずどこかに所属しなければならない」という圧力が生じる | 4つの中から必ず選ぶ必要はなく、家族の時間や勉学、趣味など休日を他の時間として過ごすことも選択肢の一つであると資料に明記する |
| 参加費の負担が新たに生じる | 休日の中学生スポーツ教室は事前登録申込とスポーツ安全保険料800円のみとし、平日の部活動支援事業は学校部活動の一環として登録料をかけない |
| 文化部は受け皿となる指導者を確保しにくい | 吹奏楽は専門業者に専門の講師派遣を依頼して楽器ごとに年2回・計20回を開催し、美術は専門の講師や市文化協会の協力で年数回開催する |
成果・効果
休日の中学生スポーツ教室は委託事業者が運営し、陸上・バドミントン・卓球・バスケットボール・サッカー・野球の6種目を総合体育館および市内学校施設等で実施してきました。令和6年度の登録生徒数は6種目合計162名で、指導者はコーチバンク登録者・競技協会・総合体育館職員等の合計20名です(令和7年3月現在)。令和7年10月からは剣道・バレーボール・ソフトテニス・ソフトボールの4種目を追加し、計10種目となりました。
制度面では、平成30年度に岩沼市立中学校「部活動の在り方に関する方針」および「部活動指導の手引き」を策定し、令和6年1月に第2版、令和7年10月に第3版へ改訂しています。国の動向としては令和4年度に運動部・文化部それぞれの検討会議提言と総合的なガイドラインが示され、宮城県中学校体育連盟が令和5年2月に県中総体への地域団体出場に関する登録を定め、県および県教育委員会が令和5年3月に「学校部活動と地域のクラブ活動等のガイドライン」第1版を策定しており、市の工程はこれらと歩調を合わせて進められてきました。
出典
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