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【事例】大阪府吹田市の部活動地域展開 ─ 地域移行せず学校部活動を残したまま指導を民間委託する独自モデル

公開:2026.07.24 更新:2026.07.24
この記事でわかること

・吹田市が「地域移行」ではなく学校部活動を残す民間委託方式を選んだ理由と仕組み
・令和6年度5校5部のモデルから全校48部活へ拡大した段階的ロードマップ
・受け皿が乏しい都市部が移行の前段階として応用できる現実的な示唆

自治体名 大阪府吹田市
人口規模 約38万人(大阪府33市中5位・2024年時点)
中学校数 18校(市立中学校)
運営形態 民間委託(学校部活動を維持したまま指導・引率・大会マネジメントを民間事業者へ外部委託。実施主体は吹田市)
対象競技 令和6年度は運動部5校5部でモデル実施、令和7年度に全校48部活へ拡大(文化部も委託対象。個別競技名は未公表)
保護者負担額 調査時点で未公表(外部委託化完了時期からの徴収を想定)

取り組みの概要

吹田市教育委員会は令和7年(2025年)8月、平成30年策定の旧方針を改訂し「吹田市 新たな中学校部活動の在り方」を策定しました。市内の生徒数は令和6年度で9,235名と5年間で増加している一方、顧問のなり手不足により運動部・文化部あわせて31部が廃部となるなど、担い手不足が深刻化しています。約8割の生徒が部活動に入部しており活動ニーズは高いものの、地域の受け皿が十分でないため、吹田市は「地域クラブ活動への移行」ではなく、学校部活動を維持しつつ指導を民間事業者へ外部委託するという独自方式を選択しました。令和6年度から5校5部で運動部の外部委託をモデル実施し、令和7年度には全校48部活へ拡大しています。新方針は令和7年8月19日から適用され、休養日・活動時間の新基準は令和9年(2027年)4月1日から施行されます。

特徴的な取り組み

  • 「移行」ではなく「委託」の選択: 地域クラブ活動への移行ではなく、学校部活動を残したまま指導・引率・マネジメントを民間事業者へ一体的に外部委託する方式を採用。実施主体・活動責任は吹田市が負い、部活動を学校教育の一部として維持します。
  • 拠点校部活動による機会確保: 在籍校に希望する部活動がない生徒も参加できるよう拠点校部活動の体制づくりを進め、部員数の少ない部は拠点校化して活動機会を保障します。
  • 段階的な全校展開: 令和6年度に5校5部でモデル実施 → 令和7年度に全校48部活へ拡大 → 令和8〜9年度以降に外部委託を全校で拡大するロードマップを設定しています。

課題と解決策

課題 解決策
顧問のなり手不足で部活動が廃部となり、生徒が活動機会を失う(令和元→令和6年度で31部減少) 指導者を教員以外(民間事業者)が担う外部委託により指導者の不在を解消し、安定した活動機会を確保
教員の長時間勤務(月80時間超の主因トップが「部活動指導」で968人・令和4年度) 外部委託の拡大と、平日1.5時間・休日3時間の活動時間上限、週3日以上の休養日設定(令和9年4月適用)で教員負担と生徒の生活バランスに配慮

成果・効果

令和6年度モデル実施校で行われた生徒・保護者アンケート(令和7年1月・肯定的回答率)では、生徒側で「指導者の説明や手本は分かりやすい」92.8%、「部活動を通じてチームワークや協調性が身についた」94.2%、「指導者の指導を受けて上達していると感じる」83.9%という結果が出ています。保護者側でも「部活動指導に満足している」80.2%、「部活動の外部委託を進めるべきだと思う」88.7%と、外部委託モデルにおおむね肯定的な評価が示されました。

出典

→ 原文: 「吹田市 新たな中学校部活動の在り方」の策定について(吹田市公式ウェブサイト)

→ 原文(方針本体PDF): 吹田市 新たな中学校部活動の在り方(令和7年8月・吹田市教育委員会)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

吹田市の事例が示すのは、「地域移行」だけが正解ではないという現実的な選択肢です。国の方針は休日部活動の地域クラブ活動への移行を掲げていますが、吹田市は地域に十分な受け皿がない現状を直視し、あえて学校部活動を残したまま指導だけを民間へ委託する道を選びました。実施主体を市が持ち続けることで、大会参加資格や安全管理の枠組みを学校教育の中に留めながら、教員の負担だけを切り離せるのが最大の強みです。受け皿となる地域団体が乏しい都市部にとって、移行の前段階として極めて再現性の高いモデルといえます。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

最大のハードルは、指導を担える民間事業者を安定的に確保できるかという点です。吹田市は令和6年度に5校5部という小規模なモデルから始め、成果とアンケートで手応えを確認したうえで全校へ拡大しました。この「小さく始めて検証してから広げる」順序が、委託先の質を見極めるうえで重要です。もう一つの課題は保護者負担の設計で、吹田市も具体額は外部委託化の完了時期に合わせて整理する段階にあります。導入自治体は、公費と受益者負担の割合を早期にアンケートで探りつつ、負担発生のタイミングを丁寧に周知することが求められます。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

実施主体を市が保持する構造は、責任の所在が明確でガバナンス面での透明性が高いといえます。活動時間の上限や休養日の基準を令和9年度から明文化している点も、持続可能性への配慮として評価できます。一方で、財源を委託費に依存する構造のため、保護者負担額と公費割合の確定が長期安定のカギとなります。モデル校での高い満足度という実績が、拡大の合意形成を後押しする材料になっています。

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