トップ 事例を探す 宮城県 【事例】宮城県気仙沼市の部活動地域展開 ─ 会費0円・指導者77人、市体育協会への委託で5クラブが39部活動を受け止める
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【事例】宮城県気仙沼市の部活動地域展開 ─ 会費0円・指導者77人、市体育協会への委託で5クラブが39部活動を受け止める

公開:2026.07.31 更新:2026.07.31
この記事でわかること

・会費0円で5クラブ・39部活動分を受け止めた気仙沼市の実証設計
・市体育協会が運営事務局、単位協会が実施主体という二層構造と指導者77人・スタッフ2人の体制
・AED所在地図の配布や心肺蘇生法動画の常時参照など、地域指導者向けの安全管理の具体策

自治体名 宮城県気仙沼市
人口規模 55,329人(令和7年度・実証事業報告書)
中学校数 公立中学校9校・生徒数1,134人(運動部活動61部活)
運営形態 市から一般社団法人気仙沼市体育協会へ業務委託。体育協会が地域クラブ運営事務局となり、単位協会が実施主体
対象競技 サッカー、卓球、バドミントン、野球、バレーボールの5競技
保護者負担額 会費0円/年(令和7年度実証事業)

取り組みの概要

気仙沼市は「中学生のスポーツ環境の充実」と「地域スポーツの振興」を2本の柱として中学校部活動の地域移行を進めています。令和5年8月にサッカーと卓球の2競技で学校と地域が連携した「合同練習会」を実施し、令和6年9月からはサッカー・卓球・バドミントン・野球・バレーボールの5競技で地域クラブ活動を開始しました。令和7年度はこれらの競技を通年で実施できる体制を整え、令和7年4月に市から市体育協会へ業務委託して地域クラブ活動を順次開始しています。令和7年度の会費は0円で、5つの地域クラブが39部活動分を受け止め、指導者は延べ77人が関わりました。市の生徒数は平成30年度の1,486人から令和6年度に1,168人へ減少し、令和12年度には939人まで減る見込みで、地区中学校総合体育大会への参加チーム数も88から60へ落ち込んでいます。

特徴的な取り組み

  • 会費0円で実証を回す: 令和7年度の5クラブはいずれも会費0円で運営されました。受益者負担を先に導入せず、まず参加のハードルを下げて実績と課題を洗い出す設計です。
  • 市体育協会への業務委託という一本化: 令和7年4月に市から一般社団法人気仙沼市体育協会へ業務委託し、体育協会が地域クラブ運営事務局として全体を束ねます。実際の指導は各単位協会(サッカー、卓球、バドミントン、野球、バレーボール)が実施主体として担う二層構造です。
  • 5クラブで39部活動を受け止める: 実施した地域クラブ活動は5クラブで、そこへ移行された部活動は39部活動にのぼります。9校に散らばる同一種目の部を1つのクラブへまとめることで、学校単位では成立しない活動を維持しています。
  • 指導者77人に対し運営スタッフは2人: 指導者は種目別にサッカー15人、卓球24人、バドミントン17人、野球15人、バレーボール6人の計77人。一方、運営スタッフは2人(うち兼務1人)で、指導は地域に厚く、事務は少数精鋭という構成です。
  • 大会参加は学校単位を維持する: 中学校体育連盟の大会には引き続き学校単位で参加する形をとっており、休日の練習環境の確保と大会の参加枠を切り分けています。
  • 広域コーディネーターを1名配置: 広域的なコーディネーター活動を行う事業担当者を1名配置し、各学校・講師・連絡調整を担当します。各地域クラブを巡回して講師から課題等をヒアリングし、助言を行っています。参加者管理や活動日時調整にはSNSアプリ・メール等を活用しています。
  • 緊急対応マニュアルとAED所在地図を指導者へ配布: 事故発生時の対応について緊急対応マニュアルを講師と随時確認し、心肺蘇生法は採用時の指導者研修で実施したうえで、講師がいつでも実施方法を確認できるよう動画サイトで閲覧できる体制を構築。各校のAED設置場所を写真と地図で記載した資料を講師へ配布しています。
  • 紹介動画を種目ごとに制作して公開: 市ホームページ等の広報媒体を活用し、生徒・保護者・学校関係者に向けて5競技それぞれの地域クラブ活動紹介動画を制作・公開しました。

課題と解決策

課題 解決策
生徒数の減少により中学校の部活動で団体競技の人数が確保できず、学校単位での活動が成り立たなくなっている 5つの地域クラブに39部活動分を集約し、9校の生徒が種目ごとに合流して活動できる体制をつくる
受益者負担を導入すると参加をためらう生徒が出る一方、無償では持続しない 令和7年度の実証は会費0円で実施し、参加実績と運営コストを把握したうえで負担の在り方を検討する
市の職員体制だけでは9校・5競技の連絡調整を担いきれない 市から一般社団法人気仙沼市体育協会へ業務委託し、体育協会が運営事務局、各単位協会が実施主体を担う二層構造とする
指導者と学校・保護者の間の連絡調整が煩雑になる 広域的なコーディネーターを1名配置し、各学校・講師との連絡調整、地域クラブの巡回とヒアリング・助言を担わせる。参加者管理や連絡にはSNSアプリ・メール等を活用する
これまで指導経験のなかった競技経験者や保護者等が指導にあたるため、事故発生時の対応に不安が残る 緊急対応マニュアルを講師と随時確認し、心肺蘇生法の動画を常時閲覧できる体制を構築。各校のAED設置場所を写真と地図で記載した資料を配布する
受け皿となる団体と指導者の絶対数が足りない 地域のつながりによる指導者の確保と育成に加え、受け皿となる団体の拡充を図るとともに、指導者の質の向上に努める

成果・効果

令和7年度は、一般社団法人気仙沼市体育協会が運営する5つの地域クラブが4月から2月まで活動しました。実施回数と参加者数(延べ)は、サッカーが休日月2回・139人、卓球が休日月2回・345人、バドミントンが休日月1回・63人、野球が休日月1回・32人、バレーボールが休日月1回・137人です。活動時間帯はサッカー・卓球・バレーボールが9時から12時、バドミントンが8時半から11時半、野球が13時から16時に設定されました。指導者は5競技で計77人、会費はいずれも0円です。

種目ごとの工夫としては、サッカーで実施団体が独自に運営しているスクール事業と連携し他市の生徒とも交流を図ったこと、卓球およびバレーボールで指導技術の習得や活動内容の充実を図るため実践を通した指導方法に関する研修会を企画・実施したことが挙げられます。市は令和7年11月に生徒・保護者等へのアンケート(実証事業成果の調査)を実施し、令和8年1月には新入生保護者への説明、令和8年2月には教員向け研修会を開催しました。今後の課題として、学校区域内の講師確保による持続的なクラブ運営体制の構築と、コーディネート業務を担う人材の発掘・育成・資質向上が示されています。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)成果報告書 宮城県・気仙沼市・白石市・角田市」(PDF)

→ 原文: スポーツ庁「事例集・全国の取組紹介」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

気仙沼市の構成で目を引くのは、指導者77人に対して運営スタッフが2人という比率です。多くの自治体が事務局体制の構築に苦しみ、コーディネーターを何人配置するかで議論が長引くなかで、気仙沼市は市体育協会への業務委託によって事務局機能を一本化し、少人数で5競技・39部活動分を回しています。体育協会が運営事務局、各単位協会が実施主体という二層構造は、競技ごとの指導者ネットワークをそのまま活かしながら、対外的な窓口を一つに束ねる形です。会費0円という設定も、初年度に参加実績と実コストを把握することを優先した判断として理解できます。負担額を決める前に、まず何人が来て何にいくらかかるのかを確かめる順序は理にかなっています。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

会費0円は実証段階だからこそ成り立つ設定であり、そのまま本格実施へ移すことはできません。指導者77人への謝金を公費だけで賄い続けるのは現実的でなく、有償化する局面で参加者が減る可能性があります。同種の方式を採る自治体は、無償期間中に「1回あたりの実費」を種目別に算出して公表し、有償化の前年度には想定額を示して反応を確かめておくべきです。次に、活動頻度の低さも論点になります。気仙沼市の実施回数は休日で月1〜2回であり、平日の学校部活動が主、休日の地域クラブが従という位置づけです。生徒や保護者が「休日も今までどおり活動できる」と期待していると落差が生じるため、頻度を含めた説明が要ります。第三に、市体育協会という単一の委託先に依存する構造は、事務局機能が集約される利点と引き換えに、協会側の人員が変われば体制が揺らぐ弱さも抱えます。運営スタッフ2人という薄さを踏まえれば、コーディネート業務を担う人材の発掘・育成は、市自身が指摘するとおり最優先の課題です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

緊急対応マニュアルの随時確認、採用時の心肺蘇生法研修と動画による常時参照体制、各校のAED設置場所を写真と地図で示した資料の配布まで整えており、安全管理の水準は高いといえます。指導経験のない競技経験者や保護者が指導者に加わる前提で仕組みを組んでいる点も現実的です。大会参加を学校単位に据え置いていることで、中体連の参加資格をめぐる混乱も避けられています。一方、会費0円という前提は公費依存を意味し、実証事業の補助が終わった後の費用構造は未提示です。市が課題に挙げる「学校区域内の講師確保」と「コーディネート業務を担う人材の育成」が進むかどうかが、持続可能性を左右します。

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