学校運動部活動の地域移行に関する最新情報(2021.12.2現在)

 昨今、学校運動部活動の地域移行については、様々な視点から議論が行われている所ですが、本ページでは、「国がどのような議論を行っているのか」ということについて情報提供が出来ればと思っております。(あくまで一個人の考察であることをあらかじめご承知おきください)

1.学校運動部活動における地域移行の背景
 そもそもこの学校運動部活動の地域移行というお話は「教員の働き方改革」という文脈で立ち上がりました。

文部科学省が行った「教員勤務実態調査(平成28年度)」によると、小学校及び中学校教員約2万人の平均勤務時間は、1日11時間を超えており、慢性的な長時間労働を強いられていることが分かります。

【報道発表】教員勤務実態調査(平成28年度)の分析結果及び確定値の公表について,文部科学省,平成30年)

 中学校(一部の都道府県では小学校も部活があります)の場合、こうした長時間勤務の主な原因の一つに「学校部活動」があります。特に運動部活動は、大会や練習試合が多く毎週末どこか試合へ行くことが多いため、必然的に顧問(教員)も土日を拘束されます。

 

「平成29年度運動部活動等に関する実態調査報告書」(スポーツ庁委託、東京書籍、平成30年3月)によると、中学校の運動部活動を担当する顧問の55.0%が「校務が忙しくて思うように出来ない」と回答しています。
他にも「自身の心身の疲労・休息不足(51.0%)」、「自身のワークライフバランス(44.6%」など、日常業務が大きな負担を感じていることが窺えます。

こうした問題関心から、教員の働き方改革の一環で学校運動部活動の地域移行の話題があがりました。

 

2.部活動の位置づけ
 そもそも、学校における部活動の位置づけはどのようなものなのでしょうか。学校の先生が指導を行う際の指針にあたる学習指導要領によると、部活動は次のように明記されています。

教科としての保健体育科において,基礎的な身体能力の育成を図るとともに,運動会,遠足や集会などの特別活動や運動部活動などの教育課程外の学校教育活動などを相互に関連させながら,学校教育活動全体として効果的に取り組むことが求められている。

(【総則編】中学校学習指導要領(平成29年告示)p32より抜粋)

また、令和3年度(2021年度)に全面実施された新学習指導要領でも次のように明記しています。

教育課程外の学校教育活動と教育課程の関連が図られるように留意するものとする。特に,生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については,スポーツや文化,科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等,学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり学校教育の一として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際,学校や地域の実態に応じ,地域の人々の協力,社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行い,持続可能な運営体制が整えられるようにするものとする。

(【総則編】中学校学習指導要領2017年度改定、2021年全面実施)

 

 つまり中学校における運動部活動は、教育課程外の学校教育活動であり、端的に言えば、「やってもやらなくても良い」ものです。とはいえ、多くの学校では運動部活動を設置していますし、その顧問も教員が務めていることがほとんどです。多くの教員が「部活動は学校がやるもの」という意識を持っています。

しかし、森永製菓が行った部活動に関する調査によると回答者(1,000人)の約7割が部活動を「負担と感じる」と回答しています。そのため多くの教員が部活動は学校でやるものだ、という意識があるものの、その本音は「部活動に充てる時間を軽減したい」、「辞めたい」、という気持ちを抱いていることが明らかとなりました。このデータは様々な媒体で報道され(「部活が負担」教員の7割 「勤務時間を超える」「全くの専門外のため指導できず生徒が可哀想」、など)部活動の負担問題に対しての議論に拍車をかけました

とはいえ、部活動へ熱心に関わってくれる教員もいます。部活動へ熱心に関わってくれる教員の意見からすると「部活動は子どもの健全育成のために必要」、「部活動は子ども達の非行防止の役割を果たしている」という部活動の価値を強く訴えています。確かにその側面もありますが、負担感を感じている教員と部活動へ熱心に関わってくれる教員との間で意見が分かれているのが実態です。


3.文部科学省・スポーツ庁の動き

 上記のような実態があるものの、文部科学省・スポーツ庁は、まず教員の勤務時間を是正しなければいけませんから、平成31年1月に「学校における働き方改革推進本部」を立ち上げました。

 この推進本部では教員の働き方改革に関する様々な議論(テスト採点の機械化や各種調査やアンケートのWeb回答化など)がなされましたが、第4回では、R5年度から段階的に中学校の学校運動部活動を地域に移行していく考えが明言されました(まずは休日)

(第4回資料より一部抜粋。全文は上記の文部科学省のHPから閲覧できます。)

その地域移行の具体的なスケジュールは以下の通りとなります。

(第4回資料より一部抜粋。全文は上記の文部科学省のHPから閲覧できます。)

 以上のように示されていますので、基本的には上記スケジュールに沿って部活動の地域移行が進んでいくこととなりました。(※ただしR5年度の予定では「段階的な」という文言がありますので、必ずしもR5年度から全国一律で始まっていくという訳ではありません。)


4.地域移行における”地域”とは何か
 こうした経緯で中学校における学校運動部活動の地域移行が示された訳ですが、では地域移行の”地域”とは具体的に何を指しているのでしょうか。
 先ほどの「学校における働き方改革推進本部(第4回)」資料によると、学校運動部活動の地域移行の際の主な運営主体は、次のように明記されています。

 

(地域部活動の運営主体)
・地域部活動の運営主体は、退職教師、地域のスポーツ指導者、スポーツ推進委員、生徒の保護者等の参画や協力を得て、総合型地域スポーツクラブ、民間のスポーツクラブ、芸術文化団体等が担うことが考えられる。
・こうした地域団体において地域部活動の運営を担う人材や指導者を確保しつつ、当該団体の責任の下で、生徒の安全の確保や指導者への謝金の管理など、地域部活動の管理運営が行われることについて、生徒、保護者等の理解を得ることが望ましい。
(学校における働き方改革推進本部(第4回)資料、「学校の働き方改革を踏まえた部活動改革について」資料2-3より抜粋(一部))

※ここでは学校部活動と対比させ便宜的に「地域部活動」と述べられています。


つまり文部科学省やスポーツ庁の考える”地域”とは、総合型地域スポーツクラブや民間のスポーツクラブ、芸術文化団体等といった住民主導で立ち上げられている団体を想定していることが分かります。
ただ、この「民間のスポーツクラブ」という言葉ですが、当然、地域のスイミングクラブ等も当てはまりますが、一方で法人化(株式会社化)されたフィットネスクラブ等を指すケースもあります。そのため「部活動をどの地域に当てはめるのか」というのは、それぞれの実情に応じて、各都道府県教育委員会、もっと言えば各市町村教育委員会での判断ということになります。

 

5.部活動の地域移行に関する問題点
 R3年10月にスポーツ庁では、部活動の地域移行のみを検討する「運動部活動の地域移行に関する検討会議(第1回)」が開催されました。当該会議では、部活動の地域移行において次のような問題が起こるものと想定し、検討されています(一部)。

(1)運動部活動の地域での受け皿
(2)指導者
(3)施設
(4)大会
(5)会費
(6)保険
(7)関連諸制度等の見直し

 こうした項目を見ると分かるように、R5年度から地域移行を段階的に行うと掲げていながらも、具体的にどのような仕組みで、どのような方式で行うのか、ということについては、未だ検討段階にあります。
個人的な意見を言えば、こうした諸問題を検討する前に、まず学校運動部活動の「どの部分が地域移行するのか」ということを決定すべきであるように思います。

「学校部活動」という概念は残したまま地域移行するのか?
それとも学校運動部活動という概念そのものが無くなるのか?

このように学校運動部活動のどの部分が地域に出ていくのかによって会費や保険の問題が変わってきますし、総合型クラブをはじめとした地域スポーツ団体も準備しておく内容が変わっていくと思いますが、現段階(2021.12.2)で国は、こうした課題を整理・検討している状況です。

 

以上、学校運動部活動の地域移行に係る大まかな概要を説明しました。
下表は、私なりにそれぞれの立場から見た地域移行に伴うメリット、デメリットについて挙げたものです。

学校(教員)からの視点 生徒からの視点 保護者からの視点 地域からの視点
メリット ・教員の労働時間が軽減する
・上記に伴う負担感が軽減する
・生徒により専門性の高い指導を受けされることが出来る。
・より専門性の高い指導が受けられる。
・自分の志向性にあった活動ができる
・子どもにより専門性の高い指導を受けさせられる
・保護者当番等の負担が軽減する
・安定的な収入源の確保
・団体としての社会的価値の増加
デメリット ・教員に代わる指導者不足
・施設管理の安全性
・月会費が高騰
・勝利至上主義への傾倒可能性
・高校(または大学)へスポーツ推薦の問題
・月会費の負担が増加する
・活動が学校施設外となる場合、送迎の問題が発生する
・受け皿として運営するための運営費の拠出
・指導中に事故が起こった場合の責任問題
・上記を運営する人材の不足

表1 部活動の地域移行に伴う各視点から見たメリット・デメリット

 

まずはこのように、それぞれの立場から地域移行におけるメリット・デメリットを共通理解しておく必要があります。ヒトノバでは、こうした部活動の地域移行に伴い、「ウチのクラブってどうすれば良いの?」、「今後どのような動きが必要なの?」とお困りのスポーツ団体やこれから学校運動部活動への参入を検討されているスポーツ団体を対象にご相談を承っておりますので、もしご興味があれば下記からご連絡頂けると幸いです。

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